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「NISAの枠が、売った年のうちに戻るらしい」。2026年8月末に金融庁の令和9(2027)年度税制改正要望が出てから、こういう見出しが増えました。いま決まっているのは「要望」です。改正でも施行でもありません。話題の中心は、生涯の非課税保有限度額(簿価ベース1,800万円)を売却したあと、翌年まで待たずに当年中に再利用できるようにする、という見直し案です。年間投資枠(最大360万円)が広がる話ではありません。
いま決まっていること、決まっていないこと
金融庁は2026年8月、「令和9(2027)年度税制改正要望」を公表しました。そのなかの「NISAの利便性向上等」に、非課税保有限度額の当年中の復活が書かれています。財務省の要望一覧でも、金融庁の先頭項目に並んでいます。
ここが大事です。税制改正要望は、各省庁が「こう直してほしい」と出すリストです。与党の税制改正大綱に載り、法律になり、施行されるまでは、いまのルールは変わりません。ニュースの「戻る予定」「戻ることに」といった言い回しを、確定情報として読むと危ないです。
一次資料は金融庁のPDFです。記事の感想ではなく、要望文そのものを見てください。
- 金融庁:令和9年度税制改正要望(PDF)
- 財務省:令和9年度税制改正要望(金融庁)一覧
いまのルールでは、枠はいつ戻るか
新NISAでは、非課税で持てる上限が二つあります。混同しやすいので、先に分けます。
- 年間投資枠:つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円=最大360万円。暦年でリセットされる側です。
- 非課税保有限度額(生涯枠):簿価ベースで1,800万円。つみたて投資枠だけで使う分は、うち1,200万円まで、といった内訳もあります。買ったときの金額(簿価)で枠を使います。値上がりした評価額では枠を食いません。
いまの制度では、NISA口座の商品を売却すると、その簿価分の生涯枠は翌年以降に再利用できます。同じ年のうちに、その枠をもう一度買う側へ回せない、というのが現行です。要望が狙っているのは、この「翌年待ち」を当年中に縮めることです。
要望が言っている「当年中の復活」はどこか
金融庁の資料では、現状を「売却すると翌年に復活」、検討案を「当年中に復活」と対比しています。対象は非課税保有限度額1,800万円(簿価ベース)です。図でも、年間投資枠の最大360万円はそのまま置かれています。
つまり、よくある誤解はだいたいこの三つです。
- 要望=改正ではない。まだ要望段階です。
- 戻るのは簿価分の生涯枠。評価益ごと枠が膨らむ話ではありません。
- 年間投資枠360万円は、この項目では広がらない。年初に決まる年間の買付上限は別物です。
資料の注記では、新NISA開始後に年間の投資可能額が360万円以下になり得るのは令和11年以降、といった制度設計上の話にも触れています。システム改修や予見可能性のため、今年度の改正が必要、という書き方です。ここも「もう来年から使える」と読む材料にはなりません。
誰の話に効きやすいか
効きやすいのは、生涯枠をかなり埋めたあとで、中身を入れ替えたい人です。いわゆるスイッチング。いまは売ると枠が翌年まで戻らないので、「売りたいが、枠が空くまで買えない」が同年内に起きやすい。当年中に簿価分が戻るなら、その引っかかりは小さくなります。
逆に、まだ枠に余裕がある人、毎年の積立を淡々と回している人には、ニュースの温度ほど急がない話です。年間360万円の天井が上がるわけでもないので、「来月から倍買える」ではありません。
もう一つ。売却そのものが目的化しないでください。枠を戻すために売る、は運用の話と別です。税金が非課税だからといって、短期の売買コストや、自分の計画を壊す取引まで正当化はしません。
いま自分がやること(要望待ちで止まらない)
決まっていない改正を待つより、いまの口座と枠の使い方を見える化した方が早いです。
- 自分の生涯枠の残りと、年間枠の残りを証券アプリで確認する
- 「売ってすぐ買い直したい」案件があるなら、それが翌年まで待てる話か、本当に急ぐ話かを分ける
- 口座をまだ持っていない人は、改正の見出しより先に、積立を続ける器を決める
銀行のファンドラップのように運用の中で売買が起きる仕組みで、NISAの成長投資枠がどう使われるかは、りそなファンドラップ「NISAオプション」の枠の使われ方と費用で整理しています。
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まとめ
金融庁の令和9年度要望に、「非課税保有限度額の当年中の復活」が入っています。まだ要望です。決まった改正ではありません。戻る候補は生涯枠の簿価分で、年間投資枠の拡大ではありません。効きやすいのは、枠を埋めたあとの入れ替えを同年内でやりたい層です。
見出しの勢いで口座を増やしたり、枠戻しのために売る必要はありません。一次資料を一度見て、自分の残り枠を確認してから動いてください。
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参考:金融庁「令和9(2027)年度税制改正要望について」(2026年8月公表)、財務省「令和9年度税制改正要望(金融庁)」一覧。制度の最終形は今後の改正過程で変わり得ます。2026年9月時点の整理です。


コメント
コメント一覧 (4件)
[…] 関連する別の要望として、同じ資料群にはNISAの「非課税保有限度額の当年中復活」もあります。枠復活の誤解整理は別記事へ。本記事は国債まわりだけに絞ります。 […]
[…] NISA枠の復活が「年内に戻る」?要望と改正の違いから整理する […]
[…] NISA枠の当年中復活: 生涯の非課税保有限度額を、売却した年のうちに再利用できるようにする要望。つみたて枠の「商品ラインナップ」の話ではない。 […]
[…] NISA口座で売った分の枠が戻るのは翌年以降。金融庁は、NISA口座内の商品を売却した場合、その簿価分の非課税枠を翌年以降に再利用できるとしています。売った年のうちには戻りません。「当年中に戻る」とする話題は税制改正の要望段階で、決まった制度ではありません(NISAの枠が「当年中に戻る」?要望と改正の違いの記事で整理しています)。 […]