暦年贈与の加算期間が2027年1月から3年超に。毎年110万円の贈与と保険金受取人を年内に確かめる順番(2026年)

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親や祖父母から毎年110万円ずつ現金をもらう「暦年贈与」は、贈与税がかからない範囲で少しずつ財産を移す方法として広く使われてきました。ただ、あげた人が亡くなったとき、その前の一定期間にもらった分は相続財産に足し戻して相続税を計算するルールがあります。この足し戻す期間(加算対象期間)は、これまで「亡くなる前3年以内」でした。2024年1月1日以後の贈与からは7年に延びることが決まっていて、2027年1月1日以後に相続が始まるケースから、実際に3年を超えて延び始めます。国税庁の公表内容をもとに、何がいつから変わるのか、毎年110万円を贈与していた場合にいくら足し戻されるのか、2026年の年末までに確かめておきたいことをまとめます(2026年10月19日確認)。

目次

2027年1月から変わる加算対象期間

国税庁のタックスアンサー(No.4161)では、亡くなった日(相続開始日)ごとに、足し戻す贈与の期間が次のように示されています。

相続開始日(あげた人が亡くなった日) 相続財産に足し戻す暦年贈与の期間
2026年(令和8年)12月31日まで 相続開始前3年以内(亡くなった日から遡って3年前の日から亡くなった日まで)
2027年(令和9年)1月1日〜2030年(令和12年)12月31日 2024年(令和6年)1月1日から亡くなった日まで
2031年(令和13年)1月1日以後 相続開始前7年以内(亡くなった日から遡って7年前の日から亡くなった日まで)

出典:国税庁 No.4161「贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」、国税庁「令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」(いずれも2026年10月19日確認)。

あわせて覚えておきたいのが、次の3点です。

  • 110万円以下の贈与も足し戻されます。贈与税がかからなかった贈与でも、期間内にもらったものは加算の対象です。
  • 延びた4年分には「総額100万円まで加算しない」枠があります。相続開始が2027年1月2日以後の場合、亡くなる前3年以内より前にもらった分は、その合計から100万円を差し引いた残りを足し戻します。
  • 2023年12月31日までの贈与は、延長の対象外です。相続開始が2027年以後なら、足し戻しの起点は2024年1月1日になるため、2023年以前の贈与は加算されません。

なお、足し戻した贈与に対して納めた贈与税があれば、その分は相続税から差し引かれます。贈与税を二重に払う形にはなりません。

毎年110万円を贈与していた場合、いくら足し戻されるか

数字で見るとイメージしやすくなります。ここでは、親が子に2024年から毎年1月10日に110万円ずつ贈与し、子が相続で財産を受け取る、という仮の条件で計算しました。国税庁の表とルール(3年以内より前の分は総額100万円を控除)に当てはめた試算です。

相続開始日(仮) 期間内の贈与 うち3年以内の分 3年より前の分(100万円を控除) 足し戻す額 (参考)3年ルールのままなら
2026年12月20日 3回・330万円 330万円 ― 330万円 330万円
2027年6月30日 4回・440万円 330万円 110万円−100万円=10万円 340万円 330万円
2029年6月30日 6回・660万円 330万円 330万円−100万円=230万円 560万円 330万円
2031年6月30日 7回・770万円 330万円 440万円−100万円=340万円 670万円 330万円

2027年に入ってすぐは差が小さいものの、年を追うごとに足し戻す額が増えていきます。2031年以後は、毎年同じ額を贈与している場合、7年分の合計から100万円を引いた額になります。実際の金額は、贈与した日、亡くなった日、受け取った人ごとに変わるので、ご自身の記録で計算し直してください。

もうひとつ、亡くなった年にもらった贈与の扱いも押さえておきたいところです。相続で財産を受け取る人がその年にもらった分は、贈与税ではなく相続税の対象になり、贈与税の申告はいりません(国税庁 No.4307)。

足し戻されるのは「相続や遺贈で財産を受け取る人」

加算のルールがかかるのは、亡くなった人から相続や遺贈(遺言による取得など)、相続時精算課税の贈与で財産を受け取った人です。相続人ではない孫が、遺産を何も受け取らなければ、孫への暦年贈与は足し戻されません。

ここで見落としやすいのが、死亡保険金です。亡くなった人が保険料を負担していた死亡保険金は、相続税法上、相続や遺贈で取得したものとみなされます(国税庁 No.4114)。そのため、孫を死亡保険金の受取人にしていると、孫も「遺贈で財産を受け取った人」に当たり、孫への贈与が加算の対象になり得ます。

ケース 暦年贈与の足し戻し 死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数) 相続税の2割加算
子(相続人)が遺産を相続する 対象 使える(相続人が受け取った保険金の合計に対して) 対象外(一親等の血族)
孫(相続人ではない)が遺産も保険金も受け取らない 対象外 ― ―
孫(相続人ではない)が死亡保険金の受取人 対象になり得る 使えない(相続人以外が受け取った保険金のため) 対象(一親等の血族ではないため)
子が相続を放棄し、死亡保険金だけ受け取る 対象になり得る 使えない(相続を放棄した人は含まれない) 対象外(一親等の血族)

出典:国税庁 No.4114「相続税の課税対象になる死亡保険金」、No.4157「相続税額の2割加算」、No.4161(いずれも2026年10月19日確認)。

「孫には毎年贈与しているし、保険金も孫に」という組み合わせは、贈与の足し戻し、非課税枠が使えないこと、2割加算の3つが重なる場合があります。保険証券の受取人欄は、贈与の記録と一緒に一度見ておくと安心です。死亡保険金の非課税枠そのものの考え方は、死亡保険金の相続税非課税枠の記事で整理しています。

足し戻されない贈与と、それぞれの期限

暦年贈与でも、次の特例で非課税になった金額は加算の対象外です。ただし、期限があるものや、すでに新規の受付が終わったものがあります。

特例 非課税の上限 期限(2026年10月19日時点の法令) 相続時の扱い
贈与税の配偶者控除(婚姻20年以上の夫婦間の居住用不動産など) 基礎控除110万円とは別に最高2,000万円 期限なし(同じ配偶者からは一生に一度) 控除額に当たる金額は加算しない
住宅取得等資金の贈与(父母・祖父母などから) 省エネ等住宅1,000万円、それ以外500万円 2026年12月31日までの贈与 非課税の適用を受けた金額は加算しない
結婚・子育て資金の一括贈与 1,000万円 2027年3月31日まで 非課税分は加算しないが、贈与者が亡くなった時の管理残額は相続税の対象になる場合がある
教育資金の一括贈与 1,500万円 2026年3月31日で新規は終了(既存の契約は継続) 非課税分は加算しないが、管理残額は相続税の対象になる場合がある

出典:国税庁 No.4161、No.4452、No.4508、No.4510、No.4511(いずれも2026年10月19日確認)。

住宅取得等資金の非課税は、現行法では2026年12月31日までの贈与が対象です。国土交通省は令和9年度税制改正要望で「必要な検討を行い、所要の措置を講じる」としていますが、2026年10月19日時点では延長は決まっていません。一括贈与の2つの制度は、すでに口座がある人の残額と出口の確認がポイントになります。詳しくは結婚・子育て資金の一括贈与の記事と教育資金の一括贈与の記事にまとめています。

相続時精算課税と並べてみる

加算期間が延びたことで、もうひとつの贈与の方法「相続時精算課税」と比べる人も増えています。2024年1月1日以後の贈与から、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除ができ、この110万円の部分は相続時に足し戻されません。

項目 暦年課税 相続時精算課税
使える人 制限なし あげる人:贈与の年の1月1日に60歳以上の父母・祖父母など/もらう人:同日に18歳以上の子・孫など
贈与税の基礎控除 もらう人ごとに年110万円(1年間の合計で判定) あげる人(特定贈与者)ごとに年110万円。同じ年に2人以上から受けると110万円を按分
基礎控除を超えた分 累進税率10〜55% 特別控除(累計2,500万円まで)を超えた分に一律20%
相続時の足し戻し 加算対象期間(2027年以後は最長7年)内の贈与。110万円以下の分も含む 2024年以後の贈与は、年110万円の基礎控除を引いた残りを、期間に関係なく足し戻す
手続き 1年間の合計が110万円を超えたら、翌年2月1日〜3月15日に申告 最初の贈与の翌年2月1日〜3月15日に「相続時精算課税選択届出書」を提出(110万円以下で申告がいらない年も届出は必要)
あとから変えられるか ― 一度選ぶと、同じあげる人からの贈与は暦年課税に戻せない

出典:国税庁 No.4103「相続時精算課税の選択」、No.4402「贈与税がかかる場合」、No.4408「贈与税の計算と税率(暦年課税)」、「令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」(いずれも2026年10月19日確認)。

どちらが向くかは、あげる人の年齢と健康状態、財産の総額、相続税がかかりそうかどうか、もらう人が何人いるかで変わります。相続時精算課税は戻れない選択なので、相続税がかかりそうな家庭は税理士や税務署の相談窓口で試算してから決めるのが無難です。

なぜ2026年のうちに贈与の記録を見直すのか

  • 2026年中の相続なら3年、2027年以後は2024年以降の全期間が対象です。これから行う贈与は、あげた人が長生きしても、亡くなる前7年以内なら足し戻されることになります。「3年たてば安心」という前提で続けてきた家庭ほど、考え方の切り替えが必要です。
  • 暦年課税の110万円は、1月1日〜12月31日の合計で判定します。2026年分の枠は12月31日で締まります。
  • 住宅取得等資金の非課税は、現行法では2026年12月31日までの贈与が対象です。住宅の購入や新築を予定している家庭は、資金を受け取る時期と、翌年3月15日までに住宅の取得などを終える要件を確認しておく必要があります。
  • 2026年分の申告と届出の期限は、2027年2月1日〜3月15日です。相続時精算課税を2026年の贈与から選ぶなら、この期間に届出書を出します。

年末までに確かめる順番

  1. 2024年1月1日以降の贈与を一覧にする。日付、金額、あげた人、もらった人、渡し方(振込・現金)を書き出します。振込の記録があれば日付が確定しやすくなります。2023年以前の分は、相続開始が2027年以後なら加算されないので、分けておくと整理しやすくなります。
  2. もらった人が、相続や遺贈で財産を受け取る立場かを確かめる。相続人かどうかに加えて、保険証券の死亡保険金受取人欄を見ます。孫や子の配偶者が受取人になっていれば、その人への贈与も足し戻しの対象になり得ます。
  3. 2026年分の贈与の合計を、もらう人ごとに出す。暦年課税は、もらう人が1年間に受け取った合計で判定します。父と母の両方からもらった場合も合算です。110万円を超えたら、2027年2月1日〜3月15日に、もらった人が申告します。
  4. 相続時精算課税を選ぶかを決める。選ぶなら、その年の贈与について翌年3月15日までに届出書を出します。一度選ぶと同じあげる人からは暦年課税に戻せないので、試算してから決めます。
  5. 期限のある非課税特例を確かめる。住宅取得等資金(現行は2026年12月31日までの贈与)と、結婚・子育て資金の一括贈与(2027年3月31日まで)です。条件と手続きは国税庁と金融機関の案内で確認します。
  6. 受け取った人が自分で管理していることが分かる形にしておく。贈与は、あげる人ともらう人の双方が合意して成り立つ契約です。日付と金額を書いた贈与契約書を残し、もらった人名義の口座に振り込み、通帳やカードはもらった人が管理しておくと、あとで説明しやすくなります。
  7. 死亡保険金の受取人と保障額を、相続人と非課税枠に並べて見直す。受取人を相続人にしておくと非課税枠の対象になります。保障額は「非課税枠いっぱいまで」から決めるのではなく、残された家族に必要な金額から考えます。

保険証券をまとめて確かめたいとき

死亡保険金の受取人、保険料を負担している人、保障額は、証券を並べないと全体が見えにくい部分です。贈与の記録と一緒に、加入中の保険を一度棚卸ししておくと、受取人の変更が必要かどうかも判断しやすくなります。

保険見直しラボは、訪問かオンラインで、手元の証券を見ながら加入中の保険を整理する相談窓口です。特定の保険の加入や解約を勧めるものではありません。贈与税・相続税の税額や申告の判断は、税理士や税務署の相談窓口で確かめてください。

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未定・要確認のこと

  • 住宅取得等資金の非課税措置の延長:令和9年度税制改正要望の段階で、2026年10月19日時点では決まっていません。延長されなければ、2027年1月1日以後の贈与には使えません。
  • 暦年課税・相続時精算課税のルールそのもの:今回の加算期間の延長は令和5年度税制改正で決まったもので、2026年10月19日時点の国税庁の案内(令和8年4月1日現在法令等)に沿って書いています。今後の税制改正で変わる可能性はあります。
  • ご家庭ごとの税額:相続税がかかるかどうか、どちらの贈与方法が有利かは、財産の総額と家族構成で変わります。国税庁の「相続税の申告要否判定コーナー」で目安をつけ、必要に応じて税理士に相談してください。

まとめ

  • 暦年贈与の足し戻し期間は、2027年1月1日以後の相続から3年を超えて延び始め、2031年以後は7年になる
  • 110万円以下の贈与も足し戻しの対象。延びた4年分は総額100万円まで差し引ける
  • 孫を死亡保険金の受取人にしていると、孫への贈与も足し戻しの対象になり得て、非課税枠は使えず2割加算もかかる
  • 住宅取得等資金の非課税は、現行法では2026年12月31日までの贈与が対象
  • 年末までに、2024年以降の贈与の一覧、保険証券の受取人、2026年分の合計額を確かめておく

出典(2026年10月19日確認)

注意・免責

本記事は、国税庁・財務省の公表内容をもとにした一般的な情報の整理です(2026年10月19日確認、令和8年4月1日現在の法令等にもとづく国税庁の案内による)。計算例は仮の条件による試算で、実際の税額を示すものではありません。特定の金融商品・保険の契約や、特定の贈与方法を勧めるものではありません。贈与税・相続税の申告や判断は、国税庁の案内、税務署の相談窓口、税理士などで確認してください。

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