インボイス制度に関する誤解を説く

インボイス制度
目次

インボイス制度とは?

インボイス制度とは「適格請求書等保存方式」のことを指します。所定要件を満たした請求書などが「適格請求書(インボイス)」と言われるものです。ただこれだけでは何のことなのかさっぱりだと思います。また、ネットなどでは「インボイス制度に反対」と言う声も聞こえて来ることもありますがほとんどの人はあまり関心が無いかと思われます。

メリット多数の法人口座、開設はネットで完結!【GMOあおぞらネット銀行】

関心が無い理由は基本的に世の中の会社員にとっては直接関係が無いからだと思われます。基本的にこの制度によって大きな影響を受けるのは「消費税の免税事業者」の方達だからです。

消費税の免税事業者とは?

免税事業者とはそのままの通りになってしまいますが消費税の納税義務がない事業者のことです。この免税事業者となることができる事業者は売上が比較的小さい事業者になります。

消費税では、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、その課税期間における課税資産の譲渡等について、納税義務が免除されます(注)。

(注)その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても特定期間(※)における課税売上高が1,000万円を超えた場合は、その課税期間から課税事業者となります。なお、特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することもできます。

※ 特定期間とは、個人事業者の場合は、その年の前年の1月1日から6月30日までの期間をいい、法人の場合は、原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間をいいます。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6501.htm

しかしここで疑問が生まれると思います。「免税事業者は消費税を請求できるのか?」これの答えは「請求できる」です。しかも納税義務がありませんのでそれがそっくりそのまま手元に残ります。つまり消費税を請求をしているがその消費税は収めなくていいよ。というのが今までのスタンスでした。

しかし2023年10月より「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」が導入されることにより状況は大きく変わります。

インボイス制度とは「売り手が買い手に対して正確な提要税率(8%、10%混在していますよね?)や消費税額などを正確に伝える」ということになります。この制度が始まると課税業者には一定条件を満たした「適格請求書」つまりインボイスを発行、保存を取引ごとに行うことが義務付けられます。これだけ聞くと漏れが無い様にする為の制度と思えますがこれが免税事業者とどう関わってくるのでしょうか?

免税事業者に与えるインボイス制度の影響

2023年10月より始まるインボイス制度つまり適格請求書の発行と義務が課税業者には義務付けられています。一方で免税事業者は的確請求書を発行する事業者になることができません。これを発行する為には課税業者になる必要があるのです。

問題は従来の制度では商品や仕事を発注する買い手側が「仕入税額控除」簡単に言いますと払った免税事業者分の控除を相殺するよ。と言うことで保たれてきましたが10月からはこれに該当する為には互いが適格請求書で無ければこの控除が受けられなくなります。(つまり簡単に言えば二重に税金を取られると考えて下さい)そうなると当然、買い手側は損をすることになりますよね?となると考えられる方法は自ずと見えて来ると思います。

どちらに仕事をお願いしたい?

例として株式会社Aが仕事をBとCの二つの事業者に依頼をかけようと考えていたとします。B(税制適格請求書を発行可能な課税業者)、C(免税事業者)となっていた場合、クオリティなどの他の要因を除いた時、あなたがAならどちらに仕事を依頼しますか?

私だったらBを選択します。理由は簡単、仕入税額控除を受けることができるので余計な費用が従来通り発生しませんよね?これをCに頼んだ場合、ざっくりと言うと「人の税金までかわりに払っている」ということになります。

勿論、従来通り免税事業者として事業者を継続はできます。しかし世の中の流れとして仕事の依頼はインボイス対応した適格事業者に流れて行くことは間違い無いでしょう。

軽減措置はあるものの今後を考えると登録はすべき

免税業者がインボイス発行をされないと買い手側の仕入税控除が適用外となりますが一定期間の軽減措置が取られます。

2023年10月1日〜2026年10月1日までは免税事業者からの仕入課税控除の80%を控除可能。また2026年10月1日〜2029年10月1日までの免税事業者からの仕入課税控除を50%控除可能となっています。

とは言えこれは免税事業者では無く課税業者、つまり買い手側への配慮ですので判断は免税事業者側にでは無く買い手側の課税業者にあることを肝に銘じて下さい。

また2023年税制改正大綱には免税業者側には課税業者に登録した場合の軽減措置が記載されています。

(1)適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置 ① 適格請求書発行事業者の令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において、免税事業者が適格請求書発行事業者となったこと又は課税事業者選択届出書を提出したことにより事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる場合には、その課税期間における課税標準額に対する消費税額から控除する金額を、当該課税標準額に対する消費税額に8割を乗じた額とすることにより、納付税額を当該課税標準額に対する消費税額の2割とすることができることとする。 (注1)上記の措置は、課税期間の特例の適用を受ける課税期間及び令和5年10 月1日前から課税事業者選択届出書の提出により引き続き事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる同日の属する課税期間については、適用しない。 (注2)課税事業者選択届出書を提出したことにより令和5年 10 月1日の属する課税期間から事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる適格請求書発行事業者が、当該課税期間中に課税事業者選択不適用届出書を提出したときは、当該課税期間からその課税事業者選択届出書は効力を失うこととする。 ② 適格請求書発行事業者が上記①の適用を受けようとする場合には、確定申告書にその旨を付記するものとする。 ③ 上記①の適用を受けた適格請求書発行事業者が、当該適用を受けた課税期間の翌課税期間中に、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を納税地を所轄する税務署長に提出したときは、その提出した日の属する課税期間から簡易課税制度の適用を認めることとする。 ④ その他所要の措置を講ずる。 (2)基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5,000 万円以下である事業者が、令和5年 10 月1日から令和11年9月 30日までの間に国内において行う課税仕入れについて、当該課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存による仕入税額控除を認める経過措置を講ずる。3)売上げに係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合には、そ- 56 – の適格返還請求書の交付義務を免除する。 (注)上記の改正は、令和5年 10 月1日以後の課税資産の譲渡等につき行う売上げに係る対価の返還等について適用する。 (4)適格請求書発行事業者登録制度について、次の見直しを行う。 ① 免税事業者が適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し、課税期間の初日から登録を受けようとする場合には、当該課税期間の初日から起算して15 日前の日(現行:当該課税期間の初日の前日から起算して1月前の日)までに登録申請書を提出しなければならないこととする。この場合において、当該課税期間の初日後に登録がされたときは、同日に登録を受けたものとみなす。 ② 適格請求書発行事業者が登録の取消しを求める届出書を提出し、その提出があった課税期間の翌課税期間の初日から登録を取り消そうとする場合には、当該翌課税期間の初日から起算して 15 日前の日(現行:その提出があった課税期間の末日から起算して 30 日前の日の前日)までに届出書を提出しなければならないこととする。 ③ 適格請求書発行事業者の登録等に関する経過措置の適用により、令和5年10 月1日後に適格請求書発行事業者の登録を受けようとする免税事業者は、その登録申請書に、提出する日から 15 日を経過する日以後の日を登録希望日として記載するものとする。この場合において、当該登録希望日後に登録がされたときは、当該登録希望日に登録を受けたものとみなす。 (注)上記の改正の趣旨等を踏まえ、令和5年 10 月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けようとする事業者が、その申請期限後に提出する登録申請書に記載する困難な事情については、運用上、記載がなくとも改めて求めないものとする。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000853546.pdf 2023年税制改正大綱ーP56より抜粋

免税業者が課税業者に登録した場合、仕入れなどでかかった消費税額にかかわらず、売上にかかる消費税額の2割を収めるだけで良いと言った軽減措置や1万円未満の課税仕入れ(経費等)についてはインボイス保存がなくても仕入課税控除ができる様になります。その他として1万円未満の値引き、返品等については返還インボイスを交付する必要も無く振込手数料分を値引き処理する場合も対象となります。

インボイス反対をすることは構わないが補助措置についても同等に評価すべき

勿論、手元に残るお金が少なくなるのは大問題なので怒りを覚える人の気持ちも理解できます。しかし会社員からすれば逆に今まで「本当は払うべきだけど合法的に見逃してもらってたんだよね?」とも捉えることができてしまいます。

見逃されていたものが修正される。その点を理解した上でまずインボイス制度、そして登録の有無、補助などを調べ分からないことは相談(商工会や税理士さんなどアドバイスを仰ぎましょう)使える相談窓口は複数存在しています。

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/invoice/index.html#a02

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice.htm

上記、財務省の特設サイトでも相談を受け付けています。(窓口が集約されていないのはどうかと思いますが・・・)

インボイス制度は確かに小規模な事業者、個人事業主にとっては大きな痛手かもしれません。ただこのケースの場合、批判すべき論点はこの制度では無く、この制度が施行されても人が人らしく生きていける社会であることなのかもしれません。

すこし、余計な口出しになってしまったかもしれませんが制度についてまだよく理解していないと言う方はまずは専門家に聞いてみることをお勧めします。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

元生損保取扱保険代理店勤務
保有資格
AFPファイナンシャルプランナー
国家資格キャリアコンサルタント

コメント

コメント一覧 (1件)

コメントする

目次